有名な禅問答があります。

修行僧A
「師匠！犬に仏性はありますか？」

師匠
「ある」

修行僧B
「師匠！犬に仏性はありますか？」

師匠
「ない」

これはどういうことでしょうか。
なぜ師匠は同じ問いに別の答えをしたのでしょうか。
と云う問答です。

ちなみに仏性とは、仏になる資質です。
言い換えると、修業したら、徳を積んだら、仏になることができる性質、という意味です。

もちろん、師匠は意図があってそう受け答えしています。
適当に答えているわけでも、耄碌しているわけでもありません。

禅問答ですから、答えはありません。
ありませんが、私はこう解釈しています。

「相手のレベル（あるいは課題）に合わせて答えた。」

例えば、修業僧Aの方が修業が進んでいるのでしょう。
彼なら、犬の仏性について話しても理解できるだろうから「ある」前提で話した。

残念ながらBはそこまでに至っていないので「ない」と答えたと考えられます。
もしかすると、この「ない」は、犬に仏性が「ない」と言っているのではなく、Bはまだその質問をする段階では「ない」と言っているのかもしれません。

少し意地悪な気もしますが、簡単に聞いてしまった答えは血や肉にはなりにくいものです。
遠回りでも、自分の力で考えることが大事という教えだと解釈しています。

なんでも補助金・助成金ビジネスに結びつけて恐縮ですが、申請書だって同じです。
それを読む人に合わせて描き方を工夫すべきです。

書き手は読み手に対して、話し手は聞き手に対して、常に無力です。
発信者に唯一できるのはわかりやすく伝えることだけです。
良い悪いの評価は受信者が決めることです。

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